「キミにかけた禁術の制限は17歳までという期間。そして代償は、術の効力が切れる時、その術の依り代となった者―――プレティラ・・・キミのお母様に、存在を消すという術が返ってくること。俗に言う術返り、ね」
「・・・そん、ざい」
私は茫然と呟く。蘇ってきたのは、私の手の中、音を立てて砕け散った、母様の姿。
「うそ、そんなことって―――じゃあ母様は本当に、」
「・・・消えてしまったのよ、愛するたったひとりの娘のために」
クワオアは容赦無く、いっそ残酷なまでに現実を突きつけてくる。
わかっている、それが私に対する優しさなのだとは。でも、やっぱり信じたくなかった、という思いが強くて。
今でもあれば夢だったのではないかと、そうであればいいとどこかで願っていたのだと思う。
項垂れて黙り込む私の眼の前まで回り込んできて、クワオアが私の両肩を掴んで顔をのぞきこんできた。
「ねえ、アムネシア」
その呼び方に、ぴくりと肩が動いてしまう。
それは、母様と同じ呼び方。
「もし彼女がキミを守るために禁術の依り代となることを決意していなかったなら、今頃どうなっていたかなんて想像がつかないわ。
キミはね、お母様の愛のおかげでこうしてここに居るのよ」
「それは、」
それは・・・封印が解けたあの瞬間から、私は常に自覚している。
自分でもわからない途方もない力を、私はずっと狙われて続けているから。
でも、“愛”は―――良く、わからない。


