てっきりもう1本の方を抜くと思っていた私は驚きに目を見張ったけれど、その刹那、がきぃん!と激しい金属音が目の前で起こった。
あの光は、やはり武器だったのだ。
それにしても―――早い。動きが。
ヘリオトロープが私を背に追いやるようにして構える。
剣を弾き合った勢いを利用してしなやかな所作で後方に一回転した人物は、フードを被っていて影で良く人相は判別できないものの、背格好から女性―――少女のように思われた。
「誰だ」
静かに発されたヘリオトロープの問いに少女は答えない。
ただ、距離をゼロに縮めた。
疾駆してくる勢いをそのままに、ヘリオトロープに向かってその体をしならせる。少女の両手に握られた曲線を描く双剣が彼を襲う。
威力を手数で補う彼女の剣技には舌を巻いたけれど、ヘリオトロープが1対1の攻防で後れを取ることがあるはずがない。
的確に片手を狙った斬撃に、乾いた音がして少女の右手から剣が消える。
ただ―――焔の剣も真ん中から砕けてへし折れた。
ヘリオトロープの動きが止まった一瞬の間隙に、少女が飛び退って距離をとる。その拍子に捲れ上がったマントから覗いたものに、私は目を丸くして叫んだ。
しゅるりと蠢く尻尾。
「ヘリオトロープ、駄目!彼女、ケットシー!」
単語を並べた私の言葉に驚いたようにもう一方の柄を握ろうと鞘に伸ばした手の動きを止めるヘリオトロープ。
不思議な事に対する少女も動きを止めた。頭に手をやり、無造作にフードを落とす。


