黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


「・・・そうか。それなら、俺から教えられることは何も無い」

いつかのようにぼかした言い方をするヘリオトロープを意識して睨みつける。

「なんで、そうやって・・・っ」

怒りのためか悲しみのためか判断できない私の声の震えに彼は一瞬だけ足を止めると、息を吸った。

「プレティラ様は―――お前の母は、お前に俺に“それ”を伝えて欲しいとは言わなかったからな。

それに、俺だって大方の予想はついても正確な話は知らない」

なんとなくその彼の言葉に翳りが垣間見えて、私はそれ以上何も言うことができなかった。



木々に囲まれてできる宙の隙間が段々と狭まってきて、そこから見える空が白んできた。

ここからはうかがうことはできないが、きっともう日が傾き始めているのだろうと思う。

ヘリオトロープの背中に従って森の奥に向かって黙々と進み続けてきた私は、思わずその黒い背に声をかけた。

「・・・あと、どのくらい?」

ヘリオトロープが外套の中から地図を引っ張りだして、僅かに首を傾げる。

「いや・・・この辺りのはずなんだが」

その言葉に一抹の不安を覚えながらも、私は足を進める。

ヘリオトロープが地図を収めようと頭を下げた時、その前方、暗い森の奥にちらっと何かが光ったように見えて、焦った私はヘリオトロープの背を叩いた。

「前!」

切迫感のある私の声に、ヘリオトロープは顔を跳ね上げ剣を引き抜いて応える。

赤みを帯びた刀身を持つそれは―――焔の剣。