「別に。その辺に投げてあったからかけてやっただけだ」
素っ気なく呟いて、軽く左右に振るった後剣を鞘に納める。
そうして歩きだしたヘリオトロープの後を慌てて追いながら、私はこっそり息を吐いた。
・・・ほら、やっぱり、何とも思っていないではないか。
まるで何もなかったみたいに、態度だって、いつも通り愛想無い。
昨夜のことをこんなにも特別に感じているのは私だけなのだと、そう突きつけられたことに何故かショックを受けている自分がいて、戸惑う。
何だろう、この気持ちの悪い胸の疼きは。
こっそりと胸元を握り締めていると不意にヘリオトロープが振り返ってきて心臓が飛び跳ねた。
表情を固める私にヘリオトロープが訝しげな視線を向ける。
「・・・やけに静かだが、どうした」
「え、いや、何も」
「そうか」
ぶんぶんと頭を振る私に短く答えると、ヘリオトロープは立ち止まって私に地図を拡げて見せた。
「今居るのがここだ、わかるな。
そして目指すのは―――ここだ。ベルデの森の最奥、森を統治する村長を筆頭にケットシーたちが暮らしている村がある」
私はこくり、と頷く。それから首を傾けた。
「そういえば・・・行って、どうするの?」
私の質問にヘリオトロープは少し詰まった後、答えずに言葉を返す。
「お前はどうして行かなければならないのか、知らないのか」
「う、うん・・・ただ母様が、そこに行けと言ったから・・・」


