・・・いや、何とも思っていないからこそか。だから、あんな・・・
でも、私は確かに彼の腕の温もりがあったからこそ、眠りに落ちることが出来たのだと思う。それは、認めざるを得ない、けれど。
「・・・私、昨日、何言った?」
今冷静になって考えれば、いろいろと口から駄々漏らしていたような気がする。
弱音を、吐いてしまった。そんなことを彼に言ったって何にもならないのに。
夜はやっぱり―――何もかもに、拒絶されたような気分になってしまって。
その中で私を包み込むあのあたたかさに、思わず気が緩んでしまったのだろうと思う。
・・・駄目だ。
私は、私は―――強くなければいけないのに。自分の身くらい、自分自身で守れなければ。
私がこの混乱の中心にいるのだと、それを自覚しろとヘリオトロープも言ったではないか。
昨日のことは、なかったことにしよう、と。
私はそう結論づけて、外套の首元を触って直しながら足を踏み出した。
「・・・ヘリオトロープ」
声、不自然じゃ、なかったかな。
未だに動揺に声が上ずっているような気がして、どうしようもなく気になってしまう。
歩み寄ってきていたことには気がついていたのだろうけれど、名前を呼ばれてはじめてヘリオトロープが動きを止めた。
「起きたのか」
「うん・・・あの、かけてくれて、ありがとう」
私がそう言って外套を軽くつまみ上げると、ヘリオトロープは仏頂面でそれを一瞥しただけでふんと鼻を鳴らした。


