黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う




ざっ、ざっ、と地を擦る微かな音に目を開く。

私の背中は木の幹にもたれていた。背と木とを隔てるものは何もない。それを確認して肘をついて体勢を起こすと、ぱさりと白い外套が落ちる。

私が昨日投げ捨てたものだ。掛けてくれたのか。肌寒い朝の空気に身震いしてのろのろとそれを羽織る。

まだぼやけた頭を抱えながら音の出処を辿って歩みを進めると、小さな湖のある拓けた場所に出た。

「―――ふっ!」

不意に聞こえた鋭い呼気に伸ばした首を引っ込める。

そのまま身を隠しつつそっと木の陰から様子を窺う。

湖のほとりで、1人の少年が剣舞をしていた。

きっと鍛錬をしているだけなのだろうが、そう言っても全く差し支えのないほどに彼の動きは美しかった。

目にも留まらぬ速さで幾方向にも突き出され薙ぎ払われる剣。日光に銀の煌めきが映える。

足が踏み出される度紫の髪がふわりと持ち上がって、その隙間から何かを見据えているような鋭い眼光が時折覗く。

暫く無意識に髪の毛をくるくると指先で弄びながらその姿に見蕩れていた私は、はっと我に返って髪の房を握りしめた。

握りしめて、そして―――その手を口元に寄せる。

髪を優しく梳いた彼の指先を思い出して、どうしても顔に熱が集まった。

その熱を契機にして、昨夜のことがみるみる思い出される。

ヘリオトロープは何故あんなことをしたのだろう。

私のことなんて、母様の頼みとして以外、何とも思っていないはずなのに。