私はおずおずと、ヘリオトロープの体に腕を回した。
彼は何も言わない。
私の頭に添えられた手のひらのあたたかさと、照り注ぐ月の光のせいで。それを反射して煌めく―――私の腕に嵌った“彼女の色”が目に入ったせいで。
私は微かな、吐息ともつかない小さな声でぽろりと呟いた。
「・・・私の“力”って、誰かを守ることができるのかな」
私の声に、ヘリオトロープが身じろぎする。
「何で突然、そんなことを言う」
「私は・・・もう既に、いちばん大切な人を喪ってしまったから。・・・何も、できなかった」
「・・・それは、お前のせいではないだろう」
慰めるようなヘリオトロープの言葉に、私は首を振った。柔らかな襟足が私の頬をくすぐった。
「そんな私に、皆を幸せにする力なんて本当にあるの?私がセカイの“希望”だなんて・・・そんなことが・・・」
仮に、そうだとしても。
私には・・・このセカイに、目指すべきものなんてない。
望むセカイなんて、ない。
それなのに、そんな私が“希望”と言われても。
考えれば考えるほど、目の前が真っ暗になるようだった。
「“力”が、欲しい」
私が零したその言葉を聞いてはいたのだろうけれど、ヘリオトロープは何も応えない。
もう一度何かを言おうとして、唇が激しく震えて、私は諦めて口を閉じた。
見つめる月がじわりと滲んで、でも・・・それだけ。
私の腕に光るアザレアピンクの護り石が、月光を静かに反射する。
私は夜闇よりも深い黒に包まれて、ゆっくりとまぶたを下ろした。


