見ないで。私を見ないで。
・・・もっと、ちゃんと見て、“私”を。
―――“私”の“声”に、気がついて。
自分の意志と関係なく湧き上がる、激しく背反する想いに、頭が歪む。
目を離すことのできない私に、息がかかるほど近くでヘリオトロープが囁いた。
「お前・・・何か言いたいことがあるんじゃないのか」
「・・・っ!」
ピンポイントに私の胸を穿つその言葉に、思わず目を見張る。
でも私は嫌々と駄々をこねる子供のように首を振った。
望む言葉を、投げかけられたはずなのに。
・・・私はたった4文字を、素直に口にすることができない。
いざ口に出そうとすると、色々なものが邪魔をして、その言葉は霧散してしまう。
ヘリオトロープは根気強く待っていたけれど、数度髪を掻き乱した後、何も言おうとしない私に呆れたようなため息をついた。
「お前自身が一番、自分のことがわかってないんだろうな」
そして私の後頭部に手を添えて、自分の肩に私の顎を載せた。
密着するような形になって私は戸惑って声を震わせる。
「ヘ、ヘリオトロープ・・・!」
「黙れ」
ヘリオトロープは有無を言わさぬ口調でぴしゃりと言い放つと、1度だけ、私の髪を指先で梳いた。
その仕草だけとればそれはまるで恋人にするようなことで私は反射的に一瞬体を強ばらせてしまったけれど、彼の指先からはそんな感情は微塵も伝わってこなくて。
愚図る子供をあやすような、優しい手つき。


