目を凝らしても、影の落ちた彼の顔を伺い見ることは出来ない。ヘリオトロープからは何も言おうとする気配は感じられなくて、私は沈黙に耐えきれずに口を開いた。
私の姿を見られているのが恥ずかしいと、ただそれだけを思ったから。
きっと醜い私の姿を、何故か、猛烈に見られたくないと。
誰にも、じゃない。
・・・ヘリオトロープ、には。
だから私は何かを言おうと唇を震わせる。
でも文字を紡ぐ前に、それは引き攣ったように固まった。代わりに漏れたのは、震える囁き。
「・・・なん、で」
ふわりと、甘い香りに包まれて、くらりとする。
視界の端に闇夜に溶ける黒い外套が舞う。ヘリオトロープが、私を抱きすくめていた。
私は・・・私は、異形の姿なのに。
なんできみはこんなことができるの。どうしてこんなことするの。
私はヘリオトロープの胸に両手を当てて押しのけようと力を込める。
でもそれに絶対に気がついているはずなのに、ヘリオトロープは腕を少しも緩めようとしない。それどころかますます私の体を引き寄せた。
「なんで!」
きみは“私”のことなんてどうでもいいんでしょ。
私はさっきと同じ言葉を語調を強めて繰り返し、ヘリオトロープに向かってぎゅっと握った拳を振り上げる。
情けないほどに力の入っていない私の手首をあっさりと掴んで、ヘリオトロープは私の顔をのぞき込んだ。
逸らそうとしても、彼はそれを許してくれない。昏く煌めく深紫が、私の黄金を捕まえる。
私はその彩に、あっさりと囚われた。


