確かに、もう空が緋を纏い始めている。
少年の細められた紫の隻眼が照らされて不思議な色に揺らめいた。
行くぞ、とそう小さく呟いて歩き出したヘリオトロープの背を追いかけるように私はよろりと立ち上がる。
ヘリオトロープはこちらを1度も見なかったものの、その歩みは驚く程にゆっくりで、私の足でも容易に並んで歩くことができた。
*
ぱちぱち、と微かに火が爆ぜる音がする。
「・・・『私は貴方を助けたい』
『赤よ、より眩しく輝け、闇夜を散らすために』」
ヘリオトロープのBoostで小さかった炎が見る間に輝きを増し燃え上がる。
日が落ちきる前に森の入口までたどり着くことができた私たちは、夜をそこで過ごすため火を起こしていた。
ヘリオトロープ曰く、木というよりも花や背の高い草が目立つ森の入口は、夜襲ってくるような動物が居ないため野宿に適しているそうなので、そこで一夜を明かすことにする。
「明日は早く出るぞ。まだ日は落ちてないが、寝れる時に寝ておけ」
「・・・うん」
私が頷いたのを見て、ヘリオトロープが木の根元に体をもたれかけて目を閉じる。
私は対面するところにある木に背中を預けて膝を抱えてはいたものの、まぶたを下ろすことはできなかった。
私は爆ぜる火にあぶられて光る彼の顔を盗み見る。
やっぱり、さっきのことが気になっていた。
『触るな!』と、そう言って私を睨んだ、彼の深紫の瞳。
一瞬だけ、本当に一瞬だけ、怯えたような色を孕んで揺らいだ。


