ヘリオトロープの動きがまた機敏さを取り戻しているからこそ、私はそれが不甲斐なかった。
せめて1人だけでもどうにかしようと、私はぐっと腕に力を込める。
でも、剣なんて扱ったことなんかない。その勢いを利用して簡単に剣を跳ね上げられた。きぃん、と小気味良い音がして、私の上半身ががら空きになる。剣の重みに腕をすぐに戻すことができない。
さすがに女を斬るようなことはする気は無いのだろう。男は剣を逆手に握り柄をこちらに向かって突き出してきた。
嘲笑うような気持ちの悪い顔が近づく。それでも私にはどうすることもできない。間に合わない。
たすけて。
丁度1人の男を突き飛ばしたヘリオトロープの背を盗み見て、思わずこぼれそうになった言葉。
でも、荒れる呼吸と共に吐き出された息を、私は飲み込んだ。
駄目だ。私のことなんか気にしたら、勝てるものも勝てなくなる。
目を逸らそうとした私の視線と、振り返ったヘリオトロープの視線が絡んだ。目を見張ったヘリオトロープがこちらに向かって爆発的な跳躍をする。
背を向けたヘリオトロープにその後ろから数人の男が好機とばかりに飛びかかる。
「だめ!ヘリオトロープ、後ろ!」
叫ぶ私の声にヘリオトロープは振り返らない。絶対に気がついているはずなのに、顔を歪めて私と剣の間に体をねじ込もうと足を伸ばす。
お願いだから、振り向いて。
そうしないと、絶対に斬られる。振り上げた銀の光と、迫ってくる影が黒光りして、私を嘲笑った。
ああ、駄目だ、全部、間に合わない―――
そう思って遂にぎゅうっときつく目を瞑った瞬間、
セカイの音が全て、遮断された。


