「やめろ・・・!」
焦ったようなヘリオトロープの声に私は返事をしない。
できるできないは関係ない。・・・やるんだ。
「っ、う、わあああああああああっ!」
叫んだことなんてない。ぎこちなく潰れる喉を無視して、私は声を上げた。そうでもしないと足が止まってしまいそうだった。
ヘリオトロープにあと僅かなところまで迫っていた男に、走ってきた勢いそのままに全力で体をぶつけた。
ヘリオトロープに集中していた男は半拍前に私に気がついたものの、低くした体勢のせいで踏ん張れずに前方へ吹っ飛ぶ。
微かな舌打ちをしてヘリオトロープが隣で腕に力を込めたのがわかった。
きんっと金属音をさせて相手の剣を跳ねあげて、振り上げた足でその体を蹴り飛ばす。それと同時に彼の額から汗が舞って光った。
「お前っ、何してるんだ!」
息が上がっている。私を睨むその紫の目にはいつもの覇気はない。
やっぱり、大分消耗している。
私はヘリオトロープの言葉を無視して、彼の腰から剣を引き抜いた。彼が抜かなかった方の剣。赤みを帯びた刀身がしゃらんと澄んだ音を立てて現れた。
ヘリオトロープが軽々と片手で振り回すものだから軽いと錯覚していたから、思ってもみなかった重みにぐらりと体を傾がせたもののどうにか両手で掲げて体勢を立て直す。
「ちょっと貸して!」
「貸してって、何する気だ!」
「ひとりで突っ走らないでよ!私だって、」
勢いで口走ったものの、その先は言葉にならない。
「わたし、だって、」
・・・私だって、何?
考えをまとめる前に男たちが走り寄ってきた。
私が剣を握ったことに少なからず警戒心を抱いたのかもしれなかった。おそらく立ち振る舞いで剣が扱えないのはばれている。
それなら、無駄なことはせずに早くやるべきことをやるべきだ。


