黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


拮抗したかと思ったのもつかの間、その姿勢がぐらりと揺れる。

曲がったククリナイフの刀身のせいで剣が変に滑ったのだ。

「あっ・・・」

思わず小さく声を上げたけれど、ヘリオトロープは歯を食いしばって姿勢を崩したまま男を押しのけた。

私はほっと胸をなでおろす。

その後すぐに他の男が後ろから斬りかかった。ヘリオトロープが体を反転させる。

でも、その動きが明らかにさっきよりも遅い。1度体勢が崩れたことでずっと張っていた集中の糸が途切れたのかもしれない。

その剣を受け止め、右から飛びかかってきた男を鳩尾に蹴りを入れていなす。

そして左からもう1人、男が体勢を低くして走ってきた。

右に気を取られていたのか、ヘリオトロープが左を振り向くのがワンテンポ遅れる。

ヘリオトロープが左からの攻撃に弱いのは当然だ。彼の左眼は銀色の眼帯に包まれているのだから。男はそれをわかって狙ってきたのだろうか。

驚いたように目を見張るヘリオトロープ。多分あの男は脚を狙っている。そんなところに一撃でも入ったら―――


そこまで考えて、私は走り出した。

疾駆する。可能な限りの速さで。

走りながら、ほぞを噛む。私が役に立たないばっかりに、こんなことになったのだ。


近づく私に何人かが気がついた。それでもこちらに攻撃してこようとする者は1人も居ない。

ヘリオトロープを叩くための人員を割くのが嫌なのか、はたまた女の私のことなんて取るに足らないと思っているのか。多分後者だろう。

こちらに背を向けるヘリオトロープは私が迫ってきたことには気がつかなかったけれど、男達の様子で何が起こっているのかはわかったようだ。