もう先に道はなかった。そそり立つ崖と、そのはるか下にさざめきを湛える陽の光に煌めく海面があるだけ。
それを認めたヘリオトロープが1度きつく目を瞑った。荒い呼吸を収めようとしているのか。
私たちの後ろでもう耳に嫌というほど聞いた蹄の音もぱらぱらと止まった。
男達が馬から飛び降りて剣を抜く。
「もう諦めな。今から俺たちと一緒に王都までついてきてもらう」
「・・・っ」
そんな、こんなところで。
まだ何も、始まっていないというのに。
息を呑む私を他所に、ヘリオトロープが男の声に振り返った。
私を降ろし、自分も剣を抜く。
少し青みを帯びたその剣は、あのとき拝借した焔の剣ではない。さすがにあの剣を向けるのは危険だと思ったのか。
自分たちに武器を向けたヘリオトロープに男たちがせせら笑うように口の端を上げた。
「この人数に1人で勝てるとでも?しかも女を庇ってるんだぜ?勇敢なナイトさんよ」
男達の人数はざっと見て10人弱ほど。確かに無謀だと思う。
それでも、あのヘリオトロープだ。私が攫われた時だって2人を相手に素手で立ち回ってみせたのだ。
だからだろうか、不可能だという気がしない。
私は止めようと1度開いた口をそっと閉じる。
剣を下ろそうとしないヘリオトロープに男が舌打ちした。
「くそ、めんどくせぇな。・・・油断するなよ。あいつはそんじょそこらの輩と違う。あんだけ速く走れる奴なんてそうそういねえからな。」
「おう」
「わかってるよ」
そう言った後、男の1人が地を蹴り集団から飛び出した。


