黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


焦りに体をかたくしていると、ヘリオトロープが私の腕を掴んだ。

次の瞬間には何のためらいもなく走り出して、古いドアを突き破るようにして店を飛び出した。

後ろから声が追いかけてきた気がしたけれど、そんなことは気にしていられない。

人通りが少ないとはいえ町の中なのでさすがに私を抱えて跳ぶというわけにもいかないので、ただ手を引く少年について無我夢中で足を動かす。

頬を鋭い風が掠め、有り得ない速さで町並みが流れてゆく。

いくら身体能力のずば抜けているヘリオトロープに手を引かれているとはいえ、こんなにも体が軽くて、早く動くものなのだろうか?

風と一体になる楽しさを感じ始めた頃、ぴたりと少年は足を止めた。

恐らく向こうの酒場の前の人が群がっているところが広場なのだろう。

絶対に見つからないように物陰に見を隠す。

ここから号外の掲示板が丁度見えたので2人で文面を確認する。

1枚の中に収めようとびっしりと書き込まれた小さな文字。

それを目で追うのも大変だが、それよりも重要なことは、私たち2人の特徴を説明するための絵が紙面に大きく載っていることだった。

私はまだましだった。

城を去った時外套を着ていなかったので、描かれているのは特徴的な白髪と黄金の瞳、そしてドレス。

でもヘリオトロープは違う。

紫色の髪、瞳、そして見た人の記憶に残る銀の眼帯。

そしてデザインは多少変わったものの相も変わらず着ている漆黒の外套。

これでは仮にフードを被って顔を隠しても酒場でヘリオトロープの姿を見た人々には外套でばれてしまうだろう。