誰かを探すように店内を見回しながら入ってきたのは1人の男性だった。
大きい荷物と重装備から察するに、恐らく旅人だろう。
「・・・くそ、まずいな」
出口が占領されているので出るに出られず立ち往生していると、隣でヘリオトロープが小さく舌打ちをした。
「どうかした?」
首をかしげた私の質問にヘリオトロープが口を開くより先に、旅人が私たちの後ろに店主を認めて手に持っていた紙を掲げた。
「おい、爺さん。まだこれ貰ってないだろ。今広場でまた新しく号外が配られてるぜ」
「なんだって?号外?」
「そうだよ。俺は王都の方から来たんだが、この町は情報が遅いな。この情報なんてもう今朝の時点では王都中に貼り出されてたぜ」
そう言いながら店主に近づき、新聞を手渡す。
店主が眼鏡をかけてそれに目を通し、それから暫くして訝しげに目を細めた。
「これは・・・人探しかね?」
「ううん、わかりやすく言ったらそうかもなあ。なんでも賞金がかかってるらしいぜ。今回の騒動に深く関わってるんだとかなんとか。
なんだかんだ騒動の中心のルクムエルク家直々の御触れだからなあ、ガセではないと思うぜ」
「・・・!」
漏れ聞こえる単語に私は思わずヘリオトロープの外套を強く握った。
と、そこで店主と熱心に話し込んでいた旅人が不意に顔を上げる。
「そういえば、そこの、旅人だよな。お前さんたちはこれ知ってるか?というか、お前さんたち―――」
・・・確かにこれはまずい。さっきはほとんど店主しか視界に入っていないようだったから大丈夫だったけれど、改めて認識されると困る。
どれだけ精密な情報が出回っているのかわからないが、正体がばれないとも限らない。


