黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


「・・・いやいや、すまんね。ベルデの方の地図なんて最近買いに来るもんは滅多におらんのでな、奥の方にしまっておったよ。

お前さんたち、あんなところに何しに行くのかね?あそこには森ぐらいしかないぞ?」

そう言ってじろりと上目遣いに見やる店主に、ヘリオトロープがため息をつきながら硬貨を乱暴にカウンターに叩きつけるようにして置いた。

「俺たちはその森に用があるんだ。どうでもいいだろう、早くそれをくれないか」

傍目にもはっきりと苛立っているとわかる彼の様子に店主が呆れたように目尻のしわをゆるめた。

硬貨をレジスターに入れて、私たちに外套と地図を手渡す。

私は受け取った外套をそそくさと羽織り、帽子を剥ぎ取ってフードを深く被った。

ヘリオトロープも私の為に短くなった外套を新しいものに羽織りなおし、私の持っている帽子と一緒に古い方を入口付近の不用品回収の箱に突っ込んだ。

「儂は老人だから詳しいことは知らんが、今はあまり旅をするには相応しくないような様子のように思えるがの・・・ううむ、後でもう1度ちゃんと新聞を読んでおくか・・・」

私たちの様子を見ながら肘をつく店主の呟く声が聞こえてくる。

反応するべきか否かと私が迷っていると、その声を無視してヘリオトロープが新しい黒の外套を翻し踵を返した。

「早く、出るぞ」

僅かに腰をかがめて耳元で低く囁く彼の声に私は頷く。

その時、ぎいっと木の軋む音がして、立て付けの悪い店の入口が開いた。