黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


この男の名を、オルカイトルムネ・ラ・レテ・セルティカという。
セルティカ王国現国王で、つまりは、私と兄様の父親でもある男だ。

でも、私は1度もこの男、オルカイトルムネを父親だなんて思ったことはない。

あの塔に私を閉じ込めることを決めたのは、紛れもなくこの男なのだ。

そして、母様に会わせてくれないのも・・・この男なのだから。

最後にその姿を目にしたのはいつなのだろう。もう、記憶の彼方であることだけは確かなのだが。


私が向ける鋭い視線に気がついたのかどうなのか、オルカイトルムネは入口に立っている兄様と私を横目で見ながら手招いた。

再び兄の後ろについて歩く。ほほにいくつもの視線が刺さるのを感じながら、ただ足を動かす。

メイドが引いた椅子に腰掛けて、私はいつの間にか止まっていた息をこっそり吐き出した。

ただ、兄様の説明のおかげで少なからず安心感がある。こっそり胸の中で感謝した。


私たちが席に着いたのを見て、紅い瞳の青年が口を開く。

「これは全員もう1度名乗った方がいいでしょうね」

そう言ってぐるりと見渡し、円卓に座った皆が同意を示したのを確認してから、彼は話し始めた。


「改めまして、僕はヴァンパイア、ヴェルメリオ王国国王ディラン・ヴェルメリオと申します。」

ヴァンパイアだ。血のような紅い瞳に鋭い牙をもつ種族で、他種族の血を摂取することで生活しており、そのために備わっているCharm“魅了”の力が特徴である。

基本的に長寿で、個体差はあるものの、不死ともいえるほどの者もいるそうだ。

そして長である国王のみ、吸血した相手を眷属にする能力を持っている。