「これはこれは。若いのに言われるとは。儂ももっとちゃんと知識を仕入れるべきかの。
ところで若いの、お前さんエルフに詳しいようだが、研究でもしているのかね?」
研究なんかをしているとは聞いていないから、きっと彼がエルフについて詳しいのはきっと母様―――彼にとっては主、が“そう”だったからだろう。
案の定ヘリオトロープは軽く首を振ると、億劫そうに口を開いた。
「違うが、そんなことはどうでもいいだろ・・・これ、黒と白、貰えるか。あとはベルデ方面の地図もあるか?」
「おお、おお、あるよ、ちょっと待っとれ」
ヘリオトロープが壁に掛けられた外套を指さすと、店主は杖をつきながらよろよろと歩いてそれを取り、カウンターに置くとまた奥の方へと引っ込んでいく。
すぐには出てこない店主にヘリオトロープがこつこつと足を鳴らし始めた。
「ヘリオトロープ、少しくらい待ったら?・・・あんなお爺さんだし」
小声で囁く私にヘリオトロープは不機嫌そうな顔を傾ける。
「早くこの町を出たいんだよ。日が落ちる前に少なくとも次の町には行きたい。それに、なんとなく・・・嫌な予感がする」
「第六感、てやつ?・・・でもまあ、きみ身体能力がずば抜けて良いし、あってもおかしくないような気はするけどね」
少し場を和らげようと思ったのだが、ヘリオトロープは更に顔をしかめただけだった。
気まずいままの雰囲気に唇を尖らせて棚を眺めていると、よいこらしょ、と気の抜けるような掛け声と共に店主が腰をさすりながら再び現れた。


