私はそうしながらも初めて見るものばかりで思わずきょろきょろと店内を見渡した。
防具屋だそうだが、小瓶に入った鮮やかな色の回復薬や薬草なども並んでいて目移りしてしまう。
「それが気になるのかね?」
そのうちの1つの射し込む光の加減で虹色に煌めく小瓶に見とれていた私はその声にびくりと肩を上下させた。
視線を引き剥がし声のした方に体を向けると、店の奥から暖簾をくぐって店主らしき老人が出てくる。
「あ、はい・・・」
私が戸惑いながらもかくかくと頷くと、店主はにたりと方頬を吊り上げた。その笑みは唇の隙間から覗く僅かに残った歯のせいで不気味にしか見えない。
「エルフの万能薬と言う貴重なものだよ。見たところ旅をしているようだし、今ならまけておくが、お嬢さん1本どうかね?」
その言葉に私はもう1度棚に並んだ瓶を見た。
確かに、その神秘的な色は仰々しい名前に相応しいかもしれない。
私が真剣に悩み始めたところで、ずっと黙り込んで何かを見ていたヘリオトロープがこちらを振り返った。
「やめておけ。まあ本当に興味本位というだけだと言うなら止めはしないが。それは全くの偽物だ。エルフにそんな薬を作るような能力は無い」
「ちょっと、ヘリオトロープ・・・!」
店主の目の前で堂々と商品が偽物だと言い出した少年に肝を冷やし、ちらりと店主の顔を見る。
意外にも心配していたような不快な表情はしておらず、それどころか顔中のしわを更に深めながら顔を歪めて、は、は、と小刻みに体を揺らした。


