黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


その言葉を聞き良く咀嚼してから、私はくらりと軽い目眩を覚えた。

「・・・そんな、今そんなことしてる場合じゃないのわかるでしょ!エルフが攻めてきたんだよ、ヒューマンが、セカイが滅びる可能性だってあるんだよ・・・?」

どこにこの感情を向ければいいのかわからずヘリオトロープの外套を握ると、彼はどこか呆れたような顔でちらりと私の顔を見やった。

「今更、何を言ってる。今セカイはな、そんな綺麗事を言えるような状態に無いってことだ。

冷静に物事を判断できるような時点は、もうとうに過ぎた。これから状況は悪化していく一方だ。

まだわかってなかったんだな、お前は。

・・・その渦中にいるのが自分だと、良く理解した方がいい」

ヘリオトロープは黙り込んだ私を見て微かに口の端を不機嫌そうに曲げた後、お金を置いて立ち上がった。

私を放って早足に出口に向かう彼の背中を追いながら、私は不均等に打つ鼓動に深呼吸した。

わかっていると、自分では思っていた。

それなのに、彼に言われた言葉にこんなにも動揺するだなんて。



「・・・ここだな」

ヘリオトロープが看板を見上げてある店の前で立ち止まった。

服の形に象られた木の看板が風に煽られて乾いた音を鳴らす。

きっとここが彼の言っていた防具屋なのだろう。

ヘリオトロープが私の方をちらりと見やってドアを開けた。

ついてこいということなのだろう。暗い店内の奥へ足を進める彼を追って進む。