黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


私のことを少なからず気にかけてくれていたのかと思うと、ここに連れてきてくれたのが情報収集のついでだとしても少しだけ嬉しかった。

気恥ずかしくなって視線をそらすと、見覚えのある茶色い菓子が目に入った。

「あれって・・・アモルデ、だっけ」

確か、ヘリオトロープが露店で買ってくれたものだ。

私が呟いた声が聞こえたのか、ヘリオトロープが視線をたどって私が見ていた男の人の方に顔を向ける。

それから私には何も言わずにカウンターの方を振り返ると、アモルデ2つ、と声を張った。

「え」

私が声を漏らすとヘリオトロープがあからさまに顔を背ける。

その様子をカウンターから見ていた大柄なマスターが私たちに声をかけてきた。

「うちのアモルデは美味いよ。酒も飲むかい?」

私は成人したので飲めるけれど経験がないし、自分がアルコールが好きだとも思えないのでその言葉に首を振る。

ヘリオトロープが何歳なのか未だにいまいちはっきりとした年齢はわからないものの、見た目や身のこなしからおそらく私より年下ではないだろうと推定できるが、彼も首を横に振った。

酒瓶を半ば棚から引きずり出していたマスターは残念そうに笑うとそれを収めた。

アモルデを差し出しながらこちらに向かって首をかしげてみせる。

「ところであんたら見ない顔だね?服もこの辺のとはちょっとばかし違うみたいだし。旅でもしてるのかい?」

しげしげと服装を確認するように見られて私はきゅっと帽子の端を引っ張った。