なるほど、確かにそれは聞いておきたい。
「例えばだけど、僕たちヒューマンは・・・」
私は訥々と語り出した兄様の声に時折頷きながら耳を傾けた。
*
説明を聞きながら赤絨毯の廊下を進んでいけば、また見えてくる豪奢な扉。
兄様が何のためらいもなく開けてしまったので、その背に隠れるようにして後に続く。
「申し訳ございません、カムルレニティス・ラ・レテ・セルティカ、ただいま参りました」
入ると同時に兄様はそう言って滑らかな所作で優雅に一礼する。
兄様の声に座っていた全員が振り返ったようだった。
それをよく見ないまま私も裾を軽くつまんでお辞儀した。視線を落とす。
作法は得意だ。私はこれだけやっていればいいんだから。口がきけないというのは、こういうときは楽でいい。
でも、いつまでも頭を下げているわけにはいかない。恐る恐る視線を戻した。
円卓に各々座った様々な種族の長たちがこちらに視線を向けているのが目に入って息が詰まる。
輝くブロンドに魚の尾を持つ藍色の瞳の女性。
闇夜のような黒髪に紅い瞳の青年。
猫のような耳をふさふさの髪から覗かせている少女。
無精髭を生やした浅黒い肌の偉丈夫。
そして、円卓だけでなく周りに何人か控えていて1番人数が多いのは、髪や瞳の色に統一性は無く、取り立てて特徴もない人々。
そのうち円卓に座り愛想笑いを貼り付けて座っている男は白い髪に黒い瞳をしている。
どちらも、兄様、カムルレニティスと同じ色だ。


