思わず立ちすくんだ私の肩に、兄様がそっと手をのせてきた。それだけで私は過剰なほどに体を跳ねさせてしまう。
「アムリィ、大丈夫かい?」
心配そうに兄様が顔をのぞきこんでくる。
私は反射的にあごを引いた。
兄様はまだ不安気に私を見据えていたけれど、時間が迫っているを思い出したのか、しぶしぶといったようすでゆっくりと歩き始めた。
・・・大丈夫なはず、ない。
私は兄様の後ろを一定の距離を開けてついて歩きながら、冷や汗が背中を伝うのを感じていた。
兄様の反応を見るに、きっといつもみたいに私は無表情のままだ。
それでいい、まわりに何も悟られちゃいけない。
私は“籠り姫”なんだから。
ずっと、自分の殻に閉じこもって生きていかなきゃいけない。
外のセカイに、味方なんてひとりもいないんだから。
泣いたって誰も分かってくれない。
叫んだって、誰も気づいてくれない。
それは、兄様だってほかの人たちと一緒。
・・・いけない。
私は考えを振り落とすように頭を軽く振った。
これからたくさんの人に会うのに、こんなことじゃ。
多分私は、みんなが思っているほど感情が乏しくなんかない。
そして、みんなが思っているより、ずっとずっと臆病者だ。
「ねぇ、アムリィ」
兄様の呼びかけに意識を呼び戻され視線を向ける。
「アムリィはこういうの初めてだろうから、少し説明しておくね。知らないと戸惑うだろうし。それぞれの種族についてなんだけどね?」


