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きっとここから先は、俺が聞く話ではないだろう。
俺は髪の毛を軽く掻き混ぜながら音を立てないように慎重に部屋から出た。
「くそ・・・」
そのまま前を向いたまま、目を瞑って大きく息をつく。
『どういうこと・・・っ!』
俺に向かって声を荒らげたあいつの顔が何故か頭の端にちらつく。
その問いに、俺は答えられない。
その質問に答えるということは、それはすなわち俺の秘密を全て話すことになるから。
それにしても、母親のことだとあんなに表情豊かになるのかと、なんとなく面白くなかった。
でも、もうそれも―――
「はぁい、騎士様?」
「!」
近くで響いた粘っこい声に、俺は反射的に左手の剣に手をやって飛び退いた。
もう一方の腰で焔の剣がかちゃりと鳴る。
「お前は・・・!」
壁にもたれかかって立っている紅い燃えるような髪色の女。
「・・・ルクムエルク家の奴か」
「知っておられたのね。さすが宮廷庭師のヘリオトロープ様ですわね?
うふふ、私はマリアですわ。以後お見知りおきを」
マリアは小馬鹿にしたように扇を口元に当てて、堪えきれないと言った様子で嫌らしく笑った。
「ルクムエルク家ということは・・・宰相の手の者か、何故こんな所に居るんだお前が」
マリアはまた笑った。
「ふふ、私の部下達がお世話になったようだけれど。
何故、ですって?ふふ、あなたたちをつけてきたに決まってるでしょう?
あなた、私がつけていることにも気づかないようで、お姫様を守ることなんてできるのかしら?」


