「・・・ヘリオトロープっ!」
「黙れ」
かちゃ、と剣が首に押し付けられた。
邪魔が入って気が立っているのだろう、04が私を睨む。
「お前なんかに言われなくても、俺はこんな奴に遅れをとったりしない」
ヘリオトロープは私の視線の先で不機嫌そうにため息をつくと、脚を狙って横薙がれた剣を跳び上がって避けた。
剣の腹をとっ、と蹴って外套を翻しながら後ろに一回転して着地する。
「は・・・?」
有り得ない高さに跳躍したヘリオトロープを09がぽかんと口を開けて見つめた。
「もう終わりか?」
「っ、何言ってんだ、すかしてんじゃねえぞ!」
常軌を逸した身体能力に気後れした様子だったが、09は再び剣を突き出した。
四方八方に薙がれる剣を、払い落とすこともせず、ただ全て避ける。当然、剣は腰にさがったままだ。
我慢ならないように頭上で大きく振りかぶられた剣をくぐり抜けて09にヘリオトロープが迫る。
「・・・あ、」
至近距離から冷たく見据える紫の瞳に、09は明らかに怯んだ。
あのくらいの跳躍で心が折れるようでは勝てるはずがなかったのだ。
私は彼の腕に抱かれて城壁を翔んだときの風を思い出した。頬を強くなぶるあの風を。
彼は、あんなに高く翔べる。こんなものじゃない。
私は自然に自分の唇が笑みを刻むのを感じた。
「っちぃ!」
ガードしようともしない仲間に04が大きく舌打ちをする。
私に押し当てていた剣を離し、ヘリオトロープに向かって駆け出した。


