『私は、飛鳥ちゃんに見せてる斎藤君の笑みが好き』
私に向けられることの無い、優しくて、柔らかい笑み。
それは、中嶋君がみっちゃんに向けるような笑みだから、いやでも気づいてしまった。
『皆は私を鈍感だなんて言うけど、私、結構鋭いんだよ？』
初めて人を好きになったから、余計に感じてしまった。
『ほら、初恋は叶わない何て言うでしょ？』
初めて…だから。
葵くんに言われなきゃ気付かないくらい、いつの間か自然に。
『そんな初恋相手に、私が敵う訳ないよー』
緩く行こう。
みっちゃんを心配させたらダメだ。
『馬鹿風花』
今まで黙っていたみっちゃんから出た言葉はそんな言葉で。
思わず、涙をごまかすためにライを撫でていた手に力が入る。
『馬鹿って何さー。私は馬鹿じゃないし‼︎』
『……馬鹿よ？
何勝手に諦めてるの。
斎藤の初恋が飛鳥だってのは聞いた。
けど、初恋でしょ？
今がそうだなんて、真翔は一言も言ってなかったわ』
だから、諦めないで。
そう言った私を見たみっちゃんの目は、いつになく真剣で。
思わず、堪えていた涙が流れていくのを感じる。
