『良い雰囲気な所悪いけど、オーダー持ってきたぜ』
からかい口調でそう言いながら厨房に入ってきた圭さんが、ちょうど作り終わっていた湊さんにオーダー表を渡しながら何か耳打ちする。
『邪魔してごめんな。湊、ちゃんと仕事しろよ』
去り際にそう言って厨房から出て行った圭さんを見て、湊さんが呆れたようなため息をついた。
湊さんと圭さんは同い年で、大学も同じらしく。
実質、湊さんがオーナーだけど、圭さんと一緒に経営してるということを最近知った。
『圭さん、楽しそうですね』
笑いながらそう言った私に、再度ため息をついた湊さんは、面倒なだけだよ、なんて言ってケーキを作り始めた。
湊さん、そんなこと言ってごまかしてるかもしれないですけど。
耳、真っ赤です…なんて、言えるわけも無くて、心の中でクスッと笑ってレモンティーを入れたのだった。



