そう言ってポケットに手を突っ込んだ斎藤君は、私を見ずに歩き始める。
でもね?
いくら斎藤君が優しくても、これは心に来ちゃうよ。
『斎藤君、今すぐ回れ右‼︎
私の家すぐ近くだから!』
そりゃあご近所に斎藤さんが居ないわけだよね。
私、何でもっと早く聞かなかったんだろ…。
『もうすぐなら、最後まで送る』
『でも…斎藤君に悪い』
ボソッと、つぶやくそうに言った私を見て呆れたように短くため息をついた斎藤君は。
歩いていた足を止め、立ち止まり、私の目の前まで歩いてきてまた立ち止まった。
『だから、俺はいい。
俺の気まぐれだし、お前が気にかけることない』
そう言った斎藤君は、なぜか私の頭をバシッと強く叩いてきて。
驚いて顔をあげると、ニヤリと口角を上げて私を見ていた。



