『……お前、本当に鈍感だな』
余りに予想外の答えを呆れたように笑って言った斎藤くんに、そっちこそ! と言いたいのをこらえた。
『……ごめん?』
そんな事を考えていたせいで思わずクエスチョンマークがつい私の言葉に、斎藤君のため息が聞こえてくる。
…呆れられた?
斎藤くんこそ、人のことなんて言えないとは思うけど。
ため息って…そう言う意味だよね?
『……馬鹿だな、本当』
そんな事を考えていたから。
突然感じた温もりと、耳元で聞こえてきた斎藤くんの声に思わず固まる。
何が起きてるの…?
斎藤くんが、私を抱きしめてる⁇
『……斎藤、くん?』
思わず顔を上げた私を、斎藤くんが見下ろす。
その瞳には、いつもとは違う優しげな感情が篭っていて、目を反らすことが出来なくなる。
どちらから視線を反らすわけでもなく、しばらく見つめていた目を一瞬そらした斎藤くん。
また、私に視線を戻した斎藤くんは、何かを決意したような表情を浮かべていた。
『……好きだ』



