厨房を出る間際に振り返ってそう言った湊さんに首を傾げたと同時に、斎藤くんが中に入ってきたのを見てそのまま固まる。
……なんで斎藤くんがここに、とか。
さっきの聞かれてた⁉︎ とか。
いろいろ頭の中でぐるぐると回って、頭が真っ白になるぐらい混乱する。
誰も、一言も話さない。
この沈黙が、永遠に続くんじゃないかなんて思ってしまった。
『……なぁ』
しばらくの沈黙の中、先に口を開いたのは斎藤くんで。
『ん……?』
何を言われるのかを身構えて、返事をする。
『……ごめん』
『………え?』
やばい…私、さっきから一言しか返していない。
でも、それほど斎藤くんに謝れたことが衝撃すぎて。
さっきの湊さんの告白と、同じぐらいの衝撃にかられた。
『……ガキだった』
斎藤くんの声が、目が。
まるで、今は何も言うなと言っているのかのように感じて。
黙って斎藤くんの言葉を聞く。
『真翔とついて行ったんだよ、水族館』
『……湊さんに向ける、お前の笑顔が嫌だった。
なんで俺じゃないんだろうって』
『でも、諦めるなんてしたくなかったから、振り向かせてやろうと思って…』
『さっきも湊さんに撫でられてるの見て、勝手に嫉妬して睨んで…』
それは、どういうこと…?



