『お前な……人を散々待たせてる上に、取り込み中だと?
ふざけるのも大概にしろ』
いつもより一オクターブ程低い声でそう言った斎藤君に、思わず鳥肌が立つ。
慣れてない、から。
こんな斎藤君も。
こんなこと言いそうな雰囲気の男の子には、近づいたことないから。
『ごめん。
後で殴るなりなんなりしていいからさ』
あくまで軽くとでもいうように、明るく笑ってそう言った中嶋君と一瞬目があう。
『とりあえず…ここではやめろよー』
『……ああ』
中嶋君の言葉に素直に頷いた斎藤君を見た中嶋君が、申し訳なさそうにみっちゃんに注文した事でケーキを取りに戻る。
『斎藤が怒るのは初めて見たわ』
『うん…私も』
『あれは確実に真翔が悪いから、当然ね』
中嶋君が頼んだのは、みっちゃんがさっき頼んだチーズケーキで。
口で文句を言いながらも、少し嬉しそうに用意するみっちゃんを見て、笑みを浮かべる。
『みっちゃん、嬉しそう』
『だって真翔が私と同じやつを注文したのよ……って、何言ってるの!』
思わず本音が出たのか、顔を赤らめて反論するみっちゃんを、ニヤニヤしながら見る。



