『いいじゃん、なぁ?』
なぁ? じゃないって。
しつこい男達から逃げるために、少しずつ後ずさるった私の背中が何かにぶつかったのを感じて、足を止める。
『ごめんなさい!』
慌てて後ろを振り返って謝った私の腕を引いた誰かを見上げて、思わず固まってしまった。
『……何してんの?』
『お前誰⁇ 関係ねえだろうが』
『関係なくても、見てて迷惑』
あり得ない。
こんな、少女漫画みたいな状況…。
嘘みたいな展開に、斎藤君に腕を引かれたまま男達と斎藤君のやり取りをボーッと見つめる。
何でここに斎藤君がいるんだろうとか、そんなのはどうでもいい。
ただ単に、助けてくれたことだけが頭の中をぐるぐると回る。
斎藤君の言葉に舌打ちした男達は、音を立てながら立ち上がってそのまま教室を出て行った。
『あ、斎藤君ありがとね?』
『……別にいいけど、この席座っていいか?』
ちょうど出て行ったせいで空いた席を指してそう言った斎藤君に頷き、辺りを見渡す。



