『本気出せば、俺の方が早いんだけどな?』


そう言った葵は、私と同じように早歩きをして、私を抜かして振り向きざまにニヤリと笑った。


…ムカつく!

なんだろう…こう…口に出された訳じゃ無いけど、馬鹿にされた感じがしてムカつく‼︎



少し夕日が沈みかけているせいで伸びた影を踏むように走って、前で歩く葵に突撃する。


『痛ってえ‼︎』

『してやったり〜』


お返しにピースをしながらそう言うと、葵が仕返しとでもいうように私の頭に手を伸ばしてきたのを見てサッと避ける。


私は捕まりませんから‼︎ 何て言いながら走っていると、いつの間にか私の家についていて。



いきなり立ち止まった私の背中に、葵が思いっきりぶつかってくる。



『いきなり止まるなって』

『ごめんね? 私、家ここだから!

今日はありがとね、葵』








『…俺こそ、さんきゅ』