笑ってはいけないと思いつつも可笑しくなった。
私よりも大分年上っぽい男性が「ちゃん」付けで呼ばれてるんだという事実を知って。


「こら、笑うな!桃!」

「だって、可笑しいでしょう。普通に」


笑いを噛み締めながら食べ進める。
厚哉が来た時は暗くなってた気持ちが華やいでくる。


「……あなた達付き合ってるの?」


何気なく飛び出した質問に、ご飯を喉に詰めそうになった。



「…ぐっ!」


何とか流れていくのを食い止めて胸を叩く。
白瀬さんはびっくりした様に目を剥き、お母さんに反論した。


「何だよ、藪から棒に!」


半端ない狼狽えぶりを見てお母さんはキョトンとした。


「だって仲がいいもん」

「そんな短絡的なことで言い出すな!」


全く…と呟く声がして、私はどうリアクションをしていいか迷う。

店長にはこの間からあれこれとアプローチをされ続けているから余計に気恥ずかしいものを感じる。


「付き合ってないの?どうして?」


天然のような質問を繰り返すお母さん。社長夫人とは思えないほどの軽率さに、白瀬さんがむくれて言い返した。


「桃は彼氏がいるんだ」


低い声にドキンと胸を鳴らして俯く。
この場合、自分はどんな態度を取ればいいんだ。


「だから無理」


それは本来、私が言うべき言葉だと思うけど白瀬さんが零した。


「あらそう。残念ねー」