本当に私の好きにしてもいいの?
誰か他の人を心の中に住まわせてしまってもいいと考えてる?

その人をもしも好きになっても、それでもいいと思う?
それで私と手を切れるのなら、厚哉は幸せにでもなれるの?




「………私は……厚哉が好きなのに……?」



そう思ったら涙が溢れ返った。
どんなに白瀬さんが私に近寄ってきても、やっぱり私は厚哉が好きだと思う。

今日だって早く帰ってきて嬉しくて堪らなくて、今朝あった怖い出来事を伝えたくて仕様がなかったから話したのに。
話した順番が違ってたせいで要らないことを考えさせたのかもしれないけど、だからと言って言っていいことと悪いことがある。



「好きにすればいい…なんて、酷いよ…」


私の密かな楽しみを奪った店長よりも酷い。
私は厚哉にそんな言葉を言って欲しくなかった。



「厚哉のバカ。分からず屋…」


お互い様だと思うけど謝る気にならない。
半開きになった唇に自分のを合わせる気にもならずに、バサッと布団を体に巻き付けるようにして眠った。



夜中にブルッと寒気を感じた。
厚哉の体からは温もりを感じられず、ただ冷たい雰囲気だけが漂ってるように思った。



翌朝目を覚ました時も同じ気持ちが続いていた。
厚哉の背中に近づく気にもならず、そっとベッドから起き出して出勤の準備を始める。