信じられない気持ちが湧くと同時に、ポトンと涙が落っこちた。
朝の怖さが引き金になっていて、話さなくてもいいことを伝えてたのかもしれないけど。


(それでも…あんな言い方ってない…)


悔しくて涙が止まらなかった。
折角早く帰ってきた厚哉と、もっと楽しい時間を過ごしたいと考えてた筈なのに。


(もういい。知らない…)


カタン、と立ち上がってガチャガチャと食器を洗った。
本当ならお風呂と同時ではお湯の出が悪くなるのに、どうしても止められなかった。


厚哉がお風呂から出てきた時も声をかけずにいた。
上半身裸だろうが何だろうが、私なんて居なくてもいいと言われたような気がしていた。


プシュ!とプルタブの開く音を耳にする。
ヤケのように缶ビールを煽る厚哉を横目にしながら何も考えないよう努めた。


お風呂から上がると、厚哉が先にベッドに入って寝てる。
私が長湯をしている間にもう一缶ビールを飲んだ後が伺えた。


強くもないのに飲んで…と、眠り込んでる顔を見つめる。
その唇から溢れた言葉を反芻する度に、何とも言えない虚しい気持ちが湧いた。





(厚哉……)


床に座り込み彼の側に擦り寄る。
酔いつぶれた人の寝顔を見ながら、聞くにも聞けない言葉を思った。


私達の関係はもう既に終わってるんだろうか。
私を引き受けると言ってくれた時の厚哉の気持ちは、もう誰か別の人へと向けられてる?