「明日から店長のお母さんと組むの」


晩ご飯を食べながら話すと厚哉の手が止まった。


「えっ」


驚いた顔をして「何故?」と聞き直す。


「今朝、フライヤーの点火の時に店長が火傷して調理ができなくなったの。自分が早朝勤務に来ても私が1人で動く羽目になるから応援を頼んだみたい」

「それが母親?」

「うん。現役の主婦だから大丈夫だろうと言ってた」

「そりゃ…そうだろうけど…」


何かを言いたそうな口振りでいる厚哉に目を向け、「何とかなるよ」と言った。


「私も早朝勤務は久しぶりだけど、業務の流れはわかってるし」


「頼むな」と白瀬さんから頼られたことが嬉しいと思う気持ちも半分あった。
厚哉の心配なんて気にもせず、食後に栗の甘煮を頬張った。


「店長の火傷ね、見るからに痛そうだったのよ。このくらい平気…みたいな顔してたけど、包帯グルグル巻きにされて病院から帰ってきたの」


誰でもあの状況を見てたら手伝ってやろうと思うんじゃないのか。
そう思い込んで話しただけなのに。


「弁当屋なんだから火傷くらいするだろ」


冷たく言い放つ厚哉の声に驚いて顔を上げた。
おかずのエビチリを口に入れつつ、ムッとした表情を浮かべてる。


「火傷するなんて気が緩んでる証拠だろ」


何も知らないでそんなふうに呟いた。
私はすぐ側であの爆発音を聞いたから、厚哉のそんな態度が気に入らなかった。