「ところで、桃。明日からなんだが…」


言い難そうにする白瀬さんに目を向ける。
何だろうかと首を傾げてると申し訳ないような顔をして切り出された。


「この手じゃ調理するにも難しいし早朝勤務に来てもほぼお前が1人で動く羽目になる。緊急に誰かを雇うと言っても難しいから、明日から暫くの間、俺の母親が来ることになった」

「母親?お母さん…ですか?」


聞き直すと気まずそうに頷く。
子供みたいな一面を見せられ、ぷっと吹き出したら気分が変わった。


「いいですよ。私は別に誰が来ても」


鬼のシゴキのお陰で何でもこなせる自信はある。
ペアを組むのが誰でも、自分が足を引っ張らなければいいんだ。


「悪いな、よろしく頼む」


珍しく下手に出る白瀬さんの態度に優越感を感じながら「任せて下さい!」と返した。
まさか、それが厚哉と距離を置いてしまうことになるなんて、何も知らずに安請け合いをしてしまった。