頑張ったな…と言いながら頭のテッペンの髪の毛をクシャクシャと揉む。


「もう、やめてよー」


そう言いながらも緊張が解れる。
厚哉に肩を抱かれて歩き始めながら、同棲生活の首は繋がったんだ…と思った。


それから1年以上経って、私は今もそのデイリーキッチンで働いている。
時間帯こそ午前8時からにはなったものの、その分終了の時間は伸びた。



(あ…もう直ぐ2時だ…)


お昼の混雑時間を過ぎた頃、夕方まではお客さんも少ない。
2時から3時が後半のパートさんやバイト君たちとのチェンジタイムで、私は近づいてくる退勤時間にワクワクしていた。



「明香さん、顔がニヤけ過ぎてますよ」


同じくパートで働くチズちゃんが頬を突く。


「もう直ぐ彼と住む家に帰れるからって、感情だだ漏れ過ぎです」


高校の夜間部に通う彼女は、夕方から学校へ行く。
同じ学校に彼氏がいることは私も知っているから、「お互い様でしょう」と答えた。


「コラそこ!真面目に働け!」


厨房の向かい側で廃油の処理をしていた店長が怒鳴る。


「はーい」

「すみませ〜ん」


ヤル気のない返事をしてキャベツの千切りを続ける。
最初の頃は包丁すらも大きくて重くて持つのがやっとの様な状態だったけど。


(今やもう慣れたもんよ)


ストトトト…とリズミカルな刃音を立てれば、向かい側で見ていた店長の白瀬さんが感心する。