無言で目を向けると見返された。
その真剣さに見つめ返してはいけないと考え、スルッと視線を逸らした。


「……厚哉いるからダメです」


私の心の中を乱さないで欲しいと思いつつ言い返した。
夜遅くまで頑張って働く彼を思い出し、きゅん…と胸が迫る。


(私が離れたら厚哉はどうなるの……?)


それ以上に自分はどうなる。
厚哉だけが頼りのように思ってるのに、他の人に言い寄られたから代わるというのはいい加減過ぎて嫌だ。


「女を不安にしかさせない男は風上にも置けねぇ」

「不安になるのは彼のことが好きだからです!」

「いや、そうでもない」


ハッキリと反論する白瀬さんを見遣り、「何故ですか?」と問った。


「心の中にこれでいいのかという迷いがあるから不安になる。迷わないで済むほど愛してもらってないから不安を感じる。…お前達、本当に上手くいってんのか?いってるなら何でいつも暗そうな目をするんだ」

「暗そうな…って、そんなことないと思いますけど……」

「ウソつけ。いつも帰る頃になると憂鬱そうにしてるじゃねぇか」


ギクッとするのを隠して、必死になって言い返した。


「それは店長の気のせいです。私は仕事が終えられるから嬉しくしてます!」

「外見上だけ、な」


ギクッ…と再びさせられた。
唖然と顔を眺めると、クッと笑いかけた口元が緩む。