こっちはその姿から目が離せず、ジッと様子を窺ってしまった。



「…食えよ。見惚れてねぇで」


ちらっと目線を動かした人に促され、そうだ…とばかりにご飯の続きを押し込む。

白瀬さんは食べ終わるまでは静かだった。
広いバックヤードの隅っこに作られた休憩スペースには、私と白瀬さんの箸の音と食べ物を噛む音、それから時々お茶を啜る音のみが響いた。


皿と茶碗の中身がなくなった頃、ようやく気持ちが芯から落ち着いてきたような気がした。
満腹になったお陰で何も考えれなくなったと言ってもいい。


「…お前さ、さっき不安だと言ってたよな」


お湯呑みを持って飲もうとしたら聞かれた。


「お前をそんなふうに不安にさせるのは何だ?やっぱり一緒に住んでる彼氏じゃねぇのか?」

「…………」


敢えて相槌を打つのは止めた。
至らぬことを言って、惑わされたくない気持ちが動いた。


「俺ならお前を不安にさせたりしない。そんな付き合いしかできない男は、同じ女を好きな男として許せない!…桃!」


厳しい口調で名前を呼ばれ、ビクッとなる。
続きを言おうとする白瀬さんの声を聞きたくないと思いながら耳を傾けた。


「俺と付き合えよ。必ず幸せにしてやる」


22年間生きてきて、こんなに熱を帯びたセリフを言われたことがあったろうか。
一瞬胸が詰まってしまい、ぐっと息を呑み込んしまう。