それは許される恋…ですか

厨房に入ると手を洗う。
この時期は感染症の時期でもあるから特に念入りに二度洗いする。


(冷たっ…)


声を出さず表情と仕草だけに表す。
振り返った厨房では炊飯器から白い湯気が立ち上がり、白瀬さんによってフライヤーの火が点けられようとしていた。


(懐かしい…)


つい半年前までは毎朝目にしていた光景。
その中で必死に働いてた自分を思い出し、ふ…っと笑みが浮かんだ。


「桃は寿司を頼む。幕の内はこっちがするから」


フライヤーの足元から立ち上がった白瀬さんから指示が下る。


「はい」


昨日の残りご飯が保温ジャーの中にあるのを確認して、それを寿司桶に移してから熱いうちに寿司酢を合わせて混ぜ込む。


(そう言えば働き始めて直ぐにやらかしたっけ)


湯気の立つご飯に砂糖を乗せながら思い起こす失敗。
散らし寿司用のご飯に混ぜるのは砂糖と決まっているのに、間違って塩を混ぜてしまったことがある。

その時はたまたま混ぜ上がったご飯の味見を白瀬さんがしてくれて、「何だコレは!?」と教えてくれたから助かったけど。


「今混ぜてるソレは塩じゃねぇよな?」


どうやら同じことを思い出したらしい。
白瀬さんから鋭い視線を向けられ、念の為に…と味見する。

容器から摘み上げた白い粉を舐めてみた。
唇に付いてしまった分を舌で舐め落としてたら、白瀬さんがボソッと呟いた。