嫌味も込めてご飯を山盛りにしてやった。
一瞬目が点になった厚哉だけど、やっぱり怒りもせずに受け取る。

箸で崩されていくご飯の山を見つめながら、私たちの求めていた生活はこんなもんだったんだろうか…と考えた。
お互いが頑張らないと成り立たない同棲生活の何処に、潤った幸せがあるんだろう。


昼間、自分を選択肢の一つに加えろと言った人のことを思った。
休憩の後も何も言わなかったように、いつも通りの悪態を付いて仕事を終えた。


ただ、いつも見てた…と言われたせいか、私としては鋭いと思っていた視線は必要以上に感じた。
見られていると意識したのもあり、私はずっと白瀬さんの方を向けなかった。


「お疲れ様でした」と声をかける時になり、ようやく彼のことを見た。
彼はニヤッと笑い、「お疲れさん」とだけ声をかけてくれた。


その顔はやっぱりイケメンだった。
厚哉と暮らしているのに、彼よりも言葉を交わす回数の多い白瀬さんのいる職場。
この一年以上の日々を思い返してみると、遥かに厚哉との生活よりも中身が濃い気がしてくる。



(だからって靡かないけどね)


厚哉との生活は私の最後の砦。
この場所が無くなってしまったら、残された道は親に縛られた未来しかない。



(はぁ…)と心の中で息を吐く。
重苦しい空気の中で食事を済ませ、お湯の中に食器を浸ける。