コンピュータープログラマーという仕事は不規則だと聞いたことはあるけど、これでは余りに度が過ぎている。


「今は無理。丁度立ち上げたばかりのプログラミングもあるし」


そう言って前にも断られた。
凝り性の厚哉にとって、きっと今の仕事は向いてて楽しいものがあるのかもしれないけど。


「でも、このままじゃいつか体壊すよ?」


お節介だと思っても口にする。
それだから「親みたい」だと怒られる。


「壊さないように気をつけてる」


昨夜はビールを2缶も飲んで食事もまともにせずに眠ったことを反省しているのか、今日は飲みもしないで食事を続けている。


「でも…」

「いいから。心配するな」


少し強めに言い返されて息を呑む。
ムッと下唇を押し出すようにしていると、食事から顔を上げた厚哉の視線とぶつかった。


「そんな恨めしそうな顔見せるなって」


自分のせいだと思ってるのか。
それとも、私の不機嫌は私の責任なのか。


「俺は明香が頑張ってるから自分も頑張ろうと思ってるだけ。こうして美味しい料理を毎日出してもらえてるから頑張れるっていうのもある」


お替わり…と言って茶碗を差し出された。
そんなふうにズルく料理を褒める厚哉の態度にムッとくるけど。


「………」


無言で茶碗を受け取り、流しに置いてある炊飯ジャーへ向かう。
背中越しに気になる厚哉の表情を伺える程の心の余裕は持たれない。


「…はい」