お料理上手なパートのおばさん達からもレシピを教わり、男性が喜ぶと思われる料理だって作れる。


今朝は厚哉の好きな卵料理にしようと決めた。
ハムが苦手な彼の為にベーコンエッグを作る。
それにトマトとブロッコリーを茹でて添え、お味噌汁の具は大根とエノキと豆腐。


「具沢山の方が好きなんだよね」


汁は勧めても飲まない。
栄養が染み込んでるから…と言っても嫌がる。


「変なところで頑固なんだから」


味噌を溶きながらクスッと笑う。
こんな余裕を持ちながら料理が出来るようになったのも、実はあの鬼店長の白瀬さんのおかげだ。

面接時に私のことを「どシロウト」だと言った彼は、米の研ぎ方から厳しく指導をしてくれた。
「違う!」とか「やり直し!」とか、絶対にイジメじゃん…と思いながらも繰り返してきた訓練。


「そう、あれは訓練だよね」


一種社会リハビリ的なことを受けて、今の私があるんだと思う。


「今度、お礼くらい言おうかな」


昨日は古いことを持ち出さないでと言ったけど、今のこの状況は明らかに彼のおかげでもある。


「でも、全ては私に根性があったからよ」


辞めたければ辞めてもいい…と言われて育てられた。
実際に私の後に入ってきた子は、彼のやり方についていけなくて辞めた。


私は辞めたくても辞めれなかった。
厚哉との生活を続けたくて、あの鬼のシゴキに耐えた。