翌朝、目覚めてみれば厚哉はきちんとベッドに入って眠っている。
よほど疲れが溜まっているらしく、私が起き出しても目の開く様子は見られない。

夜中のうちにお風呂だけは済ましたらしい。浴槽の湯が抜かれ、掃除までしてあった。


「ここまで徹底しなくてもいいのに」


同棲を始めた時の約束として、お風呂掃除とゴミ捨てだけはすると言ってくれた。
その代わり他の掃除と炊事は頼むと言われ、今も家事は分担中である。

厚哉は洗濯もできるだけ手伝うと言った。その言葉通り、洗濯機は予約時間をセットされ、既に脱水まで完了している。



「私の存在って何よ」


衣類を干しつつボヤく。
まるで自分1人だけでも生活はできるんだ…と言われているような気がする。
家賃も光熱費も食費も半分ずつ出そうと決めた厚哉には、私に対する負い目みたいなものがあるのかもしれないけど不満だ。


私はずっと実家暮らしで親を頼ってばかりだった。
職も決めれず、スネばかりを齧っていた世間知らずな私を引き受けると言ってくれた厚哉の為にも、せめて家事くらいは全部してあげたいと思っているのに。


「こうなったら美味しい朝ご飯だけでも作ってやろう」


デイリーキッチンのパート面接に行けば?と言われた時には、軽いショックみたいなものを覚えたけど、今はそれにも感謝してる。

おかげで料理に関してだけは人並みに出来るようになった。