「厚哉……君……」


茶番のような告白を受けた後で、私は両親にお見合いだけは嫌だと言い張った。

「仕事にも就けないくせに…」と父は私を罵った。
母は「気持ちは分かるけどどうするの?」と聞いた。



「彼と暮らす」


電撃告白の末に始まった同棲。
一緒に住もうと言ってくれたのは厚哉からで、私は苦し紛れに彼の言葉を利用したんだーーーー。




「…その結果がこれよね」


冷えた夕食を前に独り言。
今夜も厚哉の帰りは遅い。


「あーあ…もうすぐ9時だよ…」


しがないパート勤めだから時間が余って仕方ない。
他に仕事をすればいいんだろうけど、それではますます厚哉との距離が広がっていく。


「早く帰ってきて…」


虚しく呟く声はテレビからの笑いに消されてしまう。


「あーあ…」


昼間の仕事の疲れが出始めて、ついうとうと…とテーブルに伏せて眠り始めた。




カチャン…と金属の音がして目を開けると、玄関から入ってくる足音がして振り返る。



「……おかえり」


起き抜けの声は不機嫌そうになり、それを聞いた厚哉の顔色も変わる。



「…ただいま。起きてたんだ…」


ムッとしながらネクタイを緩めて座る。
ハーッと疲れたように息を吐く人に、思いきり待ってたモードも発動できず……


「ご飯先にする?それともお風呂に入る?」