正義感丸出しでものを言うのは簡単だけど、私にはもう諦めがついてる。


「いいの。もしかしたら結婚すれば愛が生まれるかもしれないし」


ははは…と力無く笑って目を拭いた。
怒った表情のままでいる厚哉に「気にしないでいいから」と言った。


「厚哉君は職も決まったんだから頑張って。最初はパートで勤めても、そのうち必ず正社員になれるよ」


仄かに湧いていた恋心を諦めるように言い切った。
退校の手続きに行こうとしていた私の腕を引っ張り、止めたのは彼だった。


「どう考えも駄目だ!見合いなんてさせない!」


大きな声を上げる厚哉に目を剥いて、だったらどうしろと言うの…と呟いた。


「私には何もないのよ?職も資格も何も」


先行き不透明な中で決まっているのはお見合いだけ。
それに乗らなかったらどうしていいか分からない。




「ーーー俺がいる」


迷いを振り切るように顔を上げた厚哉は、私の手首をギュッと握った。


「俺が明香を引き受ける!だからお見合いは断れ!」



「……引き受けるって……」


どういう意味だと聞き返す間もなく口付けられた。
ワッ!と声が上がる歓声の中、離れていった彼のことをぼぅっと見つめてしまった。


「ずっと明香のことが気になってた。他の男に渡すくらいなら俺のものにしたい」


ズキッとする様な痛い言葉に胸を打たれ、自分も厚哉への気持ちに気づいた。