転職をして半年が過ぎた頃、明香が勤務時間帯を変えてもらう…と言いだした。


「このままじゃ起きてる間になかなか会えないでしょう?朝くらい顔も見たいし、その方がラクだしね」


距離が離れていくように感じていたんだろうと思う。
笑って話す顔が迷っているようにも見えた。


「ふぅん」


そんなに都合よく変えてもらえるもんだろうかと思ったから、リアクションも少なく返事をした。
俺の反応の少なさに明香は少しムッとしているようだった。


幸いなことに調理師免許を持つ奴がパート募集の貼り紙を見て来たらしく、明香は早朝勤務から外してもらえることになった。



「体力的にもラクになったから家事の分担も増やしていいよ」


半分ずつにしている家事を任せて欲しいと言われ、一瞬は甘えようかと思ったけれど。


「…いや、いいよ」


自分から言い出したことの責任は取りたかった。
明香を働かさないと成り立たない生活をしていることに対し、恥じている部分も大いにあった。

明香は不満そうにしていた。
疲れている俺が、風呂掃除をしたり洗濯の予約を済ませているのも気に入らない様な言い方をすることも多かった。


「厚哉がしなくてもいいのに」


最初の頃は何をしても「ありがとう」と言ってくれた明香が、次第に「しなくてもいい」と言いだした。

「可愛い」筈の彼女が、「可愛くない」ことを言うようになっていった。